盛日和

日記のようなもの

『回転ドアは、順番に』を読みました。

タイトルの通り、穂村弘×東直子回転ドアは、順番に』(ちくま文庫)を読みました。本の感想を書くのはあまり得意ではないのですが、読後感がとてもよかったので、こうしていまキーボードをパチっています。

この物語は、恋仲となる男女の詩と短歌の応答によって展開していきます。お味はビター&スイートな感じ。

「あとがき」のさらに後ろに、作者のお二人による「自作解説」が書かれてあるのだけど、ここを読むだけでもこの本の良さは伝わるんじゃないかな。以下スイートな部分を一部抜粋します。

 初めて、二人きりで出かけるということ。
 仲良くなったばかりの、緊張と遠慮がまじった、どきどきする気持ちが、こんな「なんかちぐはぐな会話」を生んでしまったのではないかな。でも、分かり合おうとする気持ちがお互いにあるから、言葉が自由でやさしい。
 (中略)
 好きな人ができると一緒に海に行きたくなってしまうのは、なぜなんだろう。お互いの身体の中に眠っている遠い記憶を、一緒に確かめたくなるからではないかと思ったりします。(p.181)

物語の結末はネタバレになるので言いませんが、話の閉じ方が美しいと思いました。読後に絶望ではなく希望を感じたのはそのせいなのかもしれません。

***

余談ですが、自分がこの本を手に取ったのは、ある先生が書いているブログの一節がとても心に残るものだったからです。私はこのような優しさをもった人が好きだし、とても尊敬しています。以下が、そのブログの引用です。

*世の中は常にもがもな渚こぐ海人の小舟の綱手かなしも
*永遠の迷子でいたいあかねさす月見バーガーふたつください

「世の中は」「永遠の」と入って一気に目の前の光景にフォーカスすることで際立つ、日常へのあたたかいまなざし。「普遍性と個別性との統一」という言葉が空虚でないとしたら、このこぼれてゆくあたたかさを無理にでも概念でつかまえるためにあるのだと思う。

「永遠の迷子でいたい~」がこの本で紹介されている短歌。いい本に出会えたことに感謝します。